茨城県鉾田市はいちごの生産量が全国2位のいちご大国。今回は村田農園さんのもとでいちごの栽培を修行されたお二人が営む農園に見学に行ってきました。


風早いちご農園
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一番最初に行ったのは鉾田市にある早川農園さん。作業場の前には青色の可愛らしい直売所が立っていました。
早川さんは元料理人ということで、現在取引されているレストランのシェフに味の要望やイメージの相談がしやすいようです。
とちおとめを育てている早川農園さんのハウスには現在2番花始めのいちごが鈴なりになっていました。いちごの収穫は12月下旬から1月上旬まで、3月から5月までがピークだそうで、私達が見学させていただいた日はちょうど収穫期の間でした。
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ご厚意で大きいいちごと小さいいちごの食べ比べをさせていただきました。大きいいちごは甘さと酸味のバランスが良くて水分量が多く、小さいいちごは強い旨味がぎゅっと詰まった濃い味でした。どちらも美味しかったので、使う料理人さんや食べる方の好みで楽しむことができそうです。
昨年から豊洲市場で下ろすようになった早川農園さんは、農園の位置が首都圏に近く物流、配送に適した場所であり、土地柄土が良くて寒暖差のある地域のため、美味しいいちごを市場に下ろすことができているそうです。
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とちおとめは師匠である村田さんが育てているいちごであり、早川さんが惚れ込んだ品種でもあるそうですが、反面害虫や温度の変化に弱く、ハウス内が5度を下回ると休眠状態に入り春にならないと栄養を吸ったり成長がしなくなったりするようです。また、土温度が15度を切ると今度は形が変なものや先端が白い、柔らかいなどの奇形いちごが作られてしまうので毎日の観察と温度管理は重要とのこと。
栃木県では近年とちあいか品種の生産が盛んで、とちおとめを育てている農家さんは少なくなってきてしまっているそうですが、それでも惚れた品種をもっと美味しくもっとたくさんの人に食べてもらいたいと語る早川さんに職人の情熱を感じました。収穫は朝、日が昇りいちごが光合成を始めて養分を蓄え終わった一番美味しい時間に行います。早川さんが大切にしているのは「バランスの良いいちごは健全な苗に成る」という考え。1日の中でメリハリを付けて苗を育てること、根をたくさん生やして苗を疲れさせないこと、こまめに葉を取り、温度管理はもちろん毎日いちごと苗を観察することを心がけているそうです。
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次に見せていただいたのは苗木。ランナーと呼ばれる苗から出たツルが次の年のいちごの苗になります。6月から9月の間、収穫の終わった畑は一度更地に戻し、堆肥を加えて日光で消毒をします。その後、30000本弱の苗を9月に植え、葉が2枚半になるように取って強い根をつくり、12月下旬の収穫まで育てていきます。苗は2〜3年は子孫を残して栽培しますが、それ以上同じランナーから苗を作ってしまうと原種から離れてしまうそうで、栃木から新しい苗を買います。苗用の土は土屋で倍土を作ってもらってプランターで育てていました。冬の間に苗を育てていますが、いちごのハウスと違って窓が空いているためとても寒い場所で育てられています。寒い時期の苗は厳しい環境で育て、強い苗だけを使うそうです。
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最後に見せていただいたのは堆肥を作っている畑です。米ぬか、もみ殻、豚糞、蟹ガラ、馬糞を混ぜて作られた堆肥は、夏の畑に撒かれるまで別所で発酵が進められています。特に馬糞は昨年から入れられた材料だそうですが、珍しい競走馬の糞を入れています。競走馬は薬品や科学食品を食べずに育てられるため、良い肥料として試験的に入れ始めたそうです。いちご畑のpHは5.5〜6が理想ですが馬糞はpH5だそうで、発酵とともにいちごの成長を助ける堆肥になります。

動物性の堆肥を入れることで植物性堆肥の着火剤となり、発酵が早く強く進むのと同時に、動物性の堆肥はいちごの味にコクが出るそうです。堆肥は6月に畑に撒かれ、月一回混ぜながら9月の苗を植えるまでこれ以上発酵が進まない状態にして畑を整えます。

ブレイク
村田農園
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次の目的地に行く前に村田農園さんにいきました。村田さんはこの日に行く2つのいちご農園さんにいちご栽培を教えたお師匠さんだそうです。農園内にはいちごの販売所があり、新鮮ないちごシェイクやスムージーを楽しむことができます。

ヒコファーム

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最後に行ったのは常陸大宮市にあるヒコファームさん。羊と山羊が悠々と暮らすのどかな農園さんです。

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ヒコファームさんの畑にはつながったハウスがありました。湿度と温度を何棟ものハウスにわたって一定に管理するためだそうで、大きなハウス内には太いビニールの管が巡らされており暖かくなっていました。ハウス内にはいちごの他に麦のプランターがあり、アブラムシの繁殖を抑える益虫としてアブラバチが育てられています。農薬はなるべく使わず、主にデンプンや重曹を撒いて害虫を窒息させるやり方でいちごを守っています。
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そんないちご栽培をしているヒコファームさんは来年から有機栽培を試験的に始めるそうで、新しい土地に大きなハウスを立てる計画もされています。虫に弱いいちごの有機栽培は失敗すると苗が全滅してしまうリスクもあり、行う人が少ないそうで特にとちおとめ品種は病気になりやすくリスクが大きいそう。ヒコファームさんでは最初は病気に強い品種から栽培をはじめ、慣れてきたらとちおとめにしていくそうです。私たちの職場や家庭にも有機栽培いちごが登場するかもしれません。

さらに、有機栽培とは別に3棟のハウスでやよい姫の栽培を始めるそうです。やよい姫は硬くて甘く、酸味の少ない品種で長距離の運搬や外国人から好まれやすい味とのことで、今後はタイや台湾に輸出する予定だそうです。
新しいことに前向きに取り組んでいるヒコファームさんは、人工知能を使ったいちごの栽培にも挑戦しており、その裏にはオーナー彦田さんの想いもありました。人工知能を使い、農地を広げ、みんなで部活のように仕事をするのが好きで、旅行や好きなことに使う時間をもっと確保していく生活が理想だそう。
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ご厚意で大きないちごを試食させていただきました。見学に行った日の二日前から常陸大宮市は曇りが続いていたそうで、味がぼやけていたそうです。これは光合成があまりできないといちごが自身の養分を成長に使うので、味にも変化が見られるそうです。これとは逆に、ハウスが南向きでいちごの苗にたくさん日光が当たり、葉に隠れた色の薄い大きないちごは酸味がなくジャムのような美味しいいちごに育ちます。残念ながら意図的に作ることはできず、柔らかく配送も難しいので私たちの手元に来ることはなく、いちご農家さんの楽しみになっているとか。
ヒコファームさんでは「とにかく甘くて味の濃いいちご」を狙って作れるように日々、毎年考えながらお仕事をされています。試食させていただいたいちごも、買わせていただいたいちごもこの「とにかく甘くて味の濃いいちご」を体現するようなおいしさのイチゴでした。

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