日本一のニンニクの町で「日本で最も美しい村」連合の加盟村である青森県田子町へ。200年続く農家でニンニクを栽培する種子にんにく農園で最盛期を迎えたニンニクの収穫体験しました。

6月中旬に青森県田子町(たっこまち)で開催された「『日本で最も美しい村』連合料理人交流会in田子町」に参加してきました。このイベントは、田子町も加盟する失ったら取り戻すことができない日本の美しい風景を守ろうとする57の町村と地域からなる「日本で最も美しい村」連合(以下、美しい村連合)の副会長・二宮かおるさんが発案したものです。収穫体験には、Food HEROes U-30 COMMUNITYのメンバーのほか、美しい村連合に加盟する町村と地域から参加した飲食従事者が参加しました。

ニンニクの収穫体験に興奮|種子にんにく園

青森県の南端で岩手県と秋田県に接する田子町は、ニンニクの町として全国に知られています。栽培が始まったのが1962年ということで、栽培の歴史は60年を越しています。

稲作農家が多かった地域ですが、冬に農業がしにくい地域ということもあり、冬になると農家の人たちは出稼ぎに行くことがほとんどでした。そんななか地域の農協青年部が、出稼ぎ脱却のため稲作をしていない時期に収入源になる作物としてニンニクに着目し、栽培を始めたのが始まりです。

もともと火山灰土壌のやせ地で栽培が難しかったそうですが、地域の農家さんの試行錯誤もあって1975年頃には日本一のニンニクの産地として知られるようになりました。現在は、収穫量日本一の座はゆずりましたが、品質は高い評価を得続けており、「田子にんにく」はニンニクでは珍しい市町村名を冠したブランドニンニクとして知られています。

交流会は、こうした「ニンニクの町・田子」の魅力を体験するプログラムで、とくに最大のイベントが、収穫が始まったばかりのニンニクの収穫体験でした。収穫体験を受け入れてくれたのは、文政9年(1826年)から田子町で農家を営む種子にんにく園です。

ニンニク栽培の基本を、写真を交えて教えていただいた後に、いよいよニンニク畑に向かって収穫をしていきます。

ネギのような葉がきれいに一列に並んだ畑からニンニクを抜いていきます。「茎の太いものがニンニクが大きいですよ」という種子さんのアドバイスを受けて、メンバーは太い茎を選んで抜いていきます。

抜くのは力がいるのかと思いきやふかふかの土に埋まっていることもあって、ヌッポっという感触ですんなりと抜けて、土のついたニンニクが根をつけて現れます。これがなかなか気持ちがよくて、ついついクセになって抜いてしまうんです。

FHメンバーで、バーテンダーの伊藤大輔さんは、ニンニクの芽にある小さな赤ちゃんニンニクの「珠芽(しゅが)」に興味をもったようで、ニンニクはもちろん、この珠芽をたくさん集めていました。普段は破棄されてしまうような未利用部位を使った独自のカクテルを考案する伊藤さんには、とても魅力的な食材に映ったのです。

こうした素材との出会いこそ、産地に足を運ぶ楽しさであり、ぜったいに産地でしかできない経験ですよね。

抜いたニンニクは、本来は乾燥させてから出荷しますが、今回は採れたての「生ニンニク」(水分が多くて、香りが柔らかくフルーツのよう)として持ち帰って各自で楽しみました。
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田子町の観光拠点で地域発信地|田子町ガーリックセンター

青森県三戸郡田子町にある「田子町ガーリックセンター」は、まさに田子産にんにくを軸に地域の観光と食文化を発信する拠点です。運営しているのは、地域の産業振興と国際交流を目的に設立された「田子町にんにく国際交流協会」。1990年の開業当初は売店とレストランのみの施設でしたが、現在では田子産にんにくを使用した加工品の開発・販売、さらには製造拠点の整備と多角的に展開しています。

特筆すべきは、レストランの名物メニュー「田子ガーリックステーキごはん」です。2016年から1年ごとにメニューを刷新する独自のスタイルで、つねに「田子のガーリックフードの今」を伝える人気メニューです。

町内の飲食事業者3店が3品ずつ考案したニンニクを使った料理がひと口ずつ計9品ついてきます。さらに、田子町内で育った牛・豚・鶏をコンロで焼いてシャリにのせて食べる肉寿司もニンニクの薬味が。デザートのニンニクのアイスまで、まさにニンニクずくし。9品のひと口料理はどれもニンニクの特徴を活かすだけでなく、合わせる食材の良さも伝わる、良く練られたお料理の数々でした。

加工場は町内に2カ所。ひとつは同センター内にある小規模加工場で、佃煮や味噌、黒にんにくなどの製造を手がけています。もうひとつは、より大規模な専用加工施設で、にんにく製品の安定供給を支える生産基盤となっています。生鮮にんにくに頼るだけでなく、保存性の高い加工品に広げることで、通年でにんにくの魅力を発信できる仕組みが整っているのです。

また、ガーリックセンターの沿革を振り返れば、田子町が長年にわたって「日本一のにんにくの町」として歩んできた歴史と、にんにくを主役とした地域ブランディングの成果が詰まっています。農産物のひとつであるにんにくを、ここまで文化・観光・産業として押し出してきた町の戦略には、率直に感心させられます。

田子町のにんにくは、単なる食材ではなく、まちをつなぎ、人を呼び、誇りを生む地域資源として息づいているのです。


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牛の糞尿をたい肥にしてニンニク畑へ|大久保さんの「オーク牧場」

オーク牧場は、肉牛(黒毛和牛)の生産とニンニク栽培の「二刀流」に挑戦する生産者です。栄養がたくさん必要なニンニクに牛の糞尿はたい肥を使うなど循環型農業を実践しています。

ニンニクは、秋に苗を植えてから冬を越して育つ作物のため、土づくりが非常に重要です。たい肥などの有機物をしっかりとすき込むことで、長い栽培期間を支える地力を確保する必要があります。他の短期作物に比べて、たい肥の投入量やタイミングにより気を配る作物だといえます。

田子町では、ニンニク栽培に、地域で生産される牛の畜産で出た糞尿をたい肥にして投入するシステムが構築されており、地域循環型農業が出来あがっています。さらに田子町内で生産された牛(黒毛和牛)の一部は「田子牛」とブランド化されて出荷されており、オーク牧場で育った牛たちも「田子牛」として出荷されています。

そんななかでもオーク牧場は、ニンニク栽培と牛の畜産の両方を行う町内でも珍しい生産者です。案内してくれたのは、2代目の妻・大久保ゆうきさんです。

ニンニク名人・養牛名人だった先代の職人的な技術と圧倒的な経験と、2代目ゆうきさん夫婦がともに獣医出身という科学的な知見を掛け合わせることで、本当に牛にとって心地よく、農家としても収入が得られる臨界点を模索するハイブリットな生産者です。

見学では、2代目夫妻が考えるもっとも牛にとって健康な育て方、その熱い想いを聞きながら農場の見学をさてもらいました。

農場にはいって驚いたのが、糞尿の臭いがほとんどないことです。これは牛が健康に暮らしていることの証明であるとともに、大久保さんたちの管理が行き届いていることを物語っています。

なかでも興味深かったのは経産牛への取組です。繁殖と肥育を一貫して行うオーク牧場では年間4頭ほどの母牛が役目を終えていきます。これまで役目を終えた母牛は、肉として出荷されましたが、今の市場では値が付きにくく、どこに買い取られていくのかもわからない状況でした。

大久保さんたちは、オーク牧場のために10年から長ければ15年も牧場のために仔牛を生み続けてくれた母牛を、自分たちの手でしっかりおいしくしてくれる人たちと一緒に食べてあげたいとと考えるようになり、母牛に半年以上、肉牛としての肥料を与えて育て直して出荷し、肉屋の免許もとって経産牛として買い戻そうとしています。

「初めての経産牛が11月に集荷されます」とうゆうきさん。そのときに合わせてイベントを企画していますので、お楽しみに!


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あの人気キャラクターにそっくりと話題|みろくの滝

田子町のブナの原生林のなか、整備された遊歩道を歩いていくと、高さ約30m、幅約20mの滝が現れます。みろくの滝です。この滝の姿をよく見ると、どこか見覚えはありませんか?

青森県田子町にある「みろくの滝」は、ブナの原生林に包まれた遊歩道を進んだ先に現れる、高さ約30メートル、幅約20メートルの滝です。その名前は、室町時代に断食修行をしていた僧・中岳坊がこの地で亡くなり、彼が信仰していた弥勒菩薩にちなんで町民が名付けたとされています。滝は、垂直に切り立った巨岩の上を糸のような水流が流れる、美しくも神秘的な姿をしています。


あれ、よく見ると「スヌーピー」の横顔のようにも見えませんか?(訪問者のなかには、クレヨンしんちゃんのしんのすけに見えたという声も!)

この滝の周辺には、町内でも特に保存状態のよいブナやナラ、トチなどの原生林が広がっており、涼やかな水音とともに、心を癒す豊かな自然に包まれています。さらに田子町には「三本松の山ノ神」や真清田神社の杉など、天然記念物にも指定された古木・名木が点在しており、町民が古くから山とともに生きてきたことが伝わってきます。

町の人々が山を大切にしている姿勢は、地域の景観だけでなく、生活や文化、そして農業にもあらわれています。山で育まれた水や土は、里山へと流れ込み、そこで育まれた作物や生活文化を支え、やがて海へとつながっていきます。日本の食材の多様性や豊かさ、美しい景観は、こうした山の存在によって支えられているのです。

田子町のみろくの滝は、単なる観光名所ではなく、自然と人が共に生きる姿を今に伝える、重要な場所だと感じさせてくれます。山から里へ、里から海へ――私たちの暮らしは、こうした自然の循環のなかにあるのだと、改めて気づかせてくれる場所でした。


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地域を知るにはまず地元の料理屋さんから|勇鮨

田子町の滞在中にさまざまな場所で食事をしてきました。そのなかでも印象的だったのが2代目・佐藤剛大さんが大将を務める「勇鮨」です。田子町の気候風土を料理で伝えてくれます。

青森県田子町にある「勇鮨」は、町で愛される寿司店として長年営業を続けてきました。現在の大将・佐藤剛大(たけひろ)さんは2代目。地元出身で、福岡や東京・銀座で修業した後、地元に戻り地域の食事業に関わった後、家業を継ぎました。

佐藤さんは、田子町の名物となった「田子ガーリックステーキごはん」の開発にも初年度から参加。町のシンボルでもあるニンニクを、地元食材と組み合わせてアピールする料理づくりに尽力してきました。「勇鮨」では、田子のニンニクはもちろん、青森の名産である「ジュンサイ」や八戸沖の海産物など近隣地域の海産物や山の幸も取り入れており、その一皿一皿から田子町だけでなく、南部地域の風土や食文化を感じ取ることができます。

なかでもとくにおいしかったのが、ニンニクオイルをかけた玉子豆腐です。玉子豆腐の食感、ふくよかな甘味とうま味、塩味が、ニンニクオイルの香りと口当たりによってまとまり、ボリューム感のある料理になっています。

もちろん周辺の港から届いた鮨もおいしくいただけました。

料理人として地元の味を伝えるだけでなく、来店者にとって料理が「観光ガイド」としても機能する。「料理を食べることでその土地がわかる」。そんな体験を提供する勇鮨での食事は、単なる「おいしい食事」以上の意味を持っています。それはまさに、美食学の根本にある「料理とは文化であり、地域の記憶をつなぐ手段である」という考え方に通じるものです。

佐藤さんのような料理人の姿は、地方に限らず都市の料理人にも通じるはずです。自分の暮らす土地の文化や風土を、料理を通じて語ること。その積み重ねが、より豊かな食文化を育てていくのではないでしょうか。勇鮨でのひとときは、そんなことを考えさせてくれる時間でもあります。

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標高700m。町を一望する天空のロッジ|ロッジカウベル

田子町で泊まるなら「ロッジカウベル」がお勧めです。標高700mの大黒森の頂上付近に経つ宿で、目の前に広がる田子町の眺望は、ため息すら出ます。季節によっては早朝に雲海も!

「田子町で泊まるなら、ここに泊まりたい」と思わせるのが、標高約700mの大黒森の頂上付近に位置する「ロッジカウベル」です。眼下には田子町の美しい風景が広がり、季節によっては幻想的な雲海も望める“天空のロッジ”として知られています。

コロナ禍により一時閉鎖されていたこの施設ですが、2023年に株式会社あおいもりトレーディングの代表・五十嵐孝直さんが事業を継承し、再スタートしました。五十嵐さんは田子町出身ではありませんが、地域の魅力を発信する拠点としてロッジの可能性に惚れ込み、県内外の若者たちとともに再生に取り組みました。現在は、宿泊に加え、バーベキューやバレルサウナといった多様な体験も提供し、田子町の新しい観光資源として注目を集めています。

ロッジのテラスに立つと、田園風景やにんにく畑、さらには点在する酪農地や森林が見渡せます。田子町の主要な産業である農業・酪農・林業が、この景色のなかにすべて詰まっているように感じられます。自然の多様性と美しさ、そしてその恵みによって育まれる豊かな食文化。こうした景観に囲まれて料理ができたら、どんなに楽しいだろうかと想像がふくらみます。

田子町の魅力は、にんにくだけではありません。このロッジに立てば、その事実を五感で受け取ることができます。再開を決意し、行動した五十嵐さんたちの思いが、田子の未来を支えているのです。

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地域を盛りあげる天空のカフェ|Takko cafe

田子町の自然と農村生活、昔の遊びに触れる場「タプコプ創遊村」に隣接し、町の素材や文化を味わいながら体験できる地域の拠点が、川名美夏さんが運営する「Takko cafe」です。

青森県田子町、豊かな自然と田園風景が広がる高台に位置する「Takko cafe(タッコカフェ)」は、観光体験施設「タプコプ創遊村」に隣接する地域の交流拠点です。運営するのは、東京から田子町へ移住した川名美夏さんは、元地域おこし協力隊の隊員として町に関わりはじめました。任期終了後も田子町に残って、地域の魅力を発信し続けています。

Takko cafeでは、町産にんにくやえごまを使ったスイーツや軽食、地元野菜を取り入れたスパゲティなどを提供。テラス席からは田子の山並みを一望でき、心地よい風とともに食事を楽しめる“天空のカフェ”として親しまれています。

この日食べたのは、田子町産の天津桃のソースがたっぷりかかったかき氷や田子町といえばのペペロンチーノです。どれもおいしくいただきました。

さらにTakko cafeの魅力は、単なる飲食だけにとどまりません。川名さんは「地域を体験できるカフェ」をテーマに、「創遊村の野草を食べる会」や、タプコプ創遊村の大型駐車場を利用して雪灯篭をづくり、今年で14回目になる「タプコプマルシェ」など季節のイベントを積極的に企画・開催しています。

Takko cafeは、観光客にとっては田子の魅力を五感で感じる入り口であり、町の人々にとっては地域の知恵や文化を再発見し、つなぐ場所。川名さんの柔軟な発想と行動力が、この町の未来をやさしく照らしています。


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参加メンバー

@コマ 

supported by 田子町、「日本で最も美しい村」連合