料理に使われるきのこを想像してみてほしい。日本食でのまいたけの天ぷらや松茸ご飯、中華に使われるキクラゲやエリンギ、もちろんヨーロッパ各地の料理に使われるきのこは数えきれないほどある。
今回は料理には欠かせない、きのこの生産者訪問に行ってきた。

①なかのきのこ園
椎茸の原木栽培を行う農家さん。約90センチに切ったコナラやクヌギに穴を開けて鉄の棒を通して地面から浮かせる。種菌を植える穴は4〜5月に開け、半年から1年かけて木に菌を回す。10月ごろに菌が木に回ると、椎茸が生えるように木を等間隔に並べる。9日ほどで笠と軸の部分が外れ、収穫できるきのこになるそうだ。原木の上下でもきのこの出てくるタイミングが異なり、上ばかりキノコが取れた原木はひっくり返すなどして成長を促す。一度収穫し終わった椎茸の原木は、1日水に浸けて休ませると、水に浸けた低音刺激で木に再び秋になったと錯覚し、またきのこを生やすそうだ。なかのきのこ園ではこれを5回ほど繰り返し、きのこを収穫する。水に浸けると1、2回目は大きな椎茸が収穫でき、3回目以降はそれほど大きくならないが味や風味が変わり、人によっては3回目以降の椎茸が好みという人もいるそうだ。
なかのきのこ園の椎茸は香り、味が野生的で本来の椎茸の風味を楽しむことができる。
http://www.nakano-kinoko.jp/
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②田村きのこ園
椎茸の菌床栽培を行う農家さんで、大きくて肉厚な椎茸が特徴。菌床とは広葉樹(コナラやクヌギ)のおがくずとフスマなどを混ぜたブロックのことを言い、そこに種菌を植えて椎茸を育てる。100%自然由来のもので作るが、この栽培の長所は菌床を作るときにきのこに与える栄養分などを調整することができるところにある。また、菌床に種菌を植えた後は、通常無菌状態にして3ヶ月ほど置くのだが、田村きのこ園ではその倍の6ヶ月もの期間置くそうだ。半年間じっくり寝かせる作業によって椎茸の味がより濃くなり、田村きのこ園の椎茸は旬の秋にしか出回ることがない貴重な「秋の味覚」になっている。1つの菌床からは8〜10個の椎茸が収穫でき、平均的に見ると数は少なく感じるが、しいたけ1つの大きさはビニールハウスに入ったメンバーが驚きの声をあげるほど大きいものだった。一度全て収穫を終えた菌床は、なかのきのこ園と同様に水に浸けて低温刺激を与え、ふたたび収穫する。田村きのこ園ではこの作業を7〜8回行うという。
田村きのこ園の椎茸はその肉厚さと歯ごたえが特徴的で、とても食べ応えがある。
https://tamurakinokoen.jp/
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③七会きのこセンター
椎茸だけでなくさまざまな種類のきのこを栽培している。また、きのこに関しての研究も数十年前からしており、通年を通して独自の栽培方法と徹底した温度、湿度管理による安定した生産を行っている。
・まいたけ...寒暖房設備、湿度90%に完備された部屋で瓶栽培されている。棚に口を斜めにして上から下までずらりと並べられた瓶からまいたけが顔を出していた。瓶の中身の木屑や種菌は1度しか使用せず、種菌を植えてからの培養には30日ほどしかかからないそうだ。
・アワビタケ、白ひらたけ、ひらたけ、たもぎタケ...全て同じ部屋で栽培されている。こちらも寒暖房設備と湿度調整された部屋で栽培されており、胞子などの影響がお互い出にくいもの同士で同室になっている。
・ハナビラタケ...名前の通り白い花びらのようなヒラヒラとした笠が特徴で、まいたけ同様ハナビラタケ単体での栽培を1室で行っている。まいたけやアワビタケで採用されている瓶栽培とは異なり、四角い菌床を乾かないようにビニール袋に1つ1つ包んで栽培されていた。種菌の培養には80日ほどかかり、七会きのこセンター内のきのことしては長い部類に入るという。ハナビラタケは酸素が薄く、湿度もほぼ100%の部屋の方がよく育つそうで、部屋の中は常に水蒸気が充満した真っ白い部屋だった。ハナビラタケの菌床はカラ松が主な原料になっており、使い終わった菌床は葉野菜の畑に撒くといい肥料になるそうだ。
https://nanakai-kinoko.net/
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茨城県の栽培方法の違う3つのきのこ農家さんにお邪魔してきた。きのこの栽培自体ネットの動画で何度かみた事がある(趣味できのこを栽培している人のYouTubeチャンネルなど)程度だったので、現地に行って実際に目で見て触れて体験できたのは非常に新鮮で勉強になった。1日で3ヶ所の農家さんにお邪魔できる機会もなかなか無いが、記憶が新しいうちに別の栽培方法も見る事ができてきのこに対する知見が1日でぐっと上がった様に思う。全ての農家さんできのこを買わせてもらい、実際に食べてみたが、同じきのこの品種でも種菌に種類や育てる環境で全く味が違うことに、農作物と同じ農家さんのこだわりを感じた。ちなみに私の好みはなかのきのこ園さんのしいたけだった。一番味が濃くワイルドで、きのこが好きな人にはぜひおすすめしたい。
茨城県庁のホームページに「きのこトピックス」があり生産者訪問後読んでみたが、さらにきのこに関して面白い雑学が載っていた。気になる人はぜひ一度訪れてほしい。
https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/ringyose/seikkinoko/koza/kinoko1.html