「ローカル・オイシーヌ ~美瑛と木曽の食事会」のレポートはこちら



10月6日と7日に開催したFood HEROes U-30 COMMUNITYが企画した食事会「ローカル・オイシーヌ    ~美瑛と木曽の食事会」での料理とドリンクのコースを紹介します。

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ウェルカムドリンク|narai(杉野森酒造)

甘味と淡い酸味があり、白ブドウを彷彿させるフルーティーさがある味わいです。
日本酒というより白ワインのような味わいで、これから来る数々の料理に向けて盛り上げてくれる軽やかなお酒です。

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カクテル|制約

長野県木曽町の歴史からインスピレーションを受けたカクテルです。

木曽町は山間にあり厳しい寒さで有名な地域です。また戦国時代には、さらに厳しい状況に立たされます。戦国時代の木曽町の人々は当時林業を中心に営んでいました。しかし、森林保護政策が始まり、山での伐採や収集が制限され、仕事を失うこととなりました。そんな厳しい時代や環境をイメージしています。

木曽の木から取った木肌がカクテルに使われているため、深く香りを吸い込むと草木の香りがあり、味わいはべっこう飴に似た甘さがしつつも、漢方の様な香りとほろ苦さがあります。グラスを回し、氷が少しずつ溶けてくると味わいが丸くまとまる印象があり、一口目の引き込まれるような味から、徐々に解放されるような味の変化も楽しめるカクテルになっています。

カクテルを担当した伊藤さんは「飲みながら過去の木曽町へタイムスリップした気分になってほしくて、スワリングを経て完成するように作りました」といいます。

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アミューズ|ファームズ千代田の美瑛羊のタルタル、トマトと中善酒造店の酒粕

美瑛町のファームズ千代田の羊肉は、羊肉の独特な臭みがなく、クリアできれいな味わいです。盛り付けられているスプーンは少し温められていることから、羊肉の脂が固まってしまうこともなく、羊肉の隅々まで味わい尽くしてほしいという鄭さんの想いが伝わってきます。

トマトと酒粕は美瑛町の土で作られたトマト、木曽町の酒蔵で作られた酒粕のコラボレーションした丸山さん考案のひと品です。酒粕が持つ特有の香りがトマトの甘味酸味と混ざり合って、まとまりのある味に仕上がっています。また、土台のクッキーに少し塩味があり、トマトと酒粕の甘みを引き出すのに一役買っていました。

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なお、料理がのっている木の小皿、そしてお水が入れられた木のコップ、こちれは木曽地域の伝統工芸品である木曽漆器です。木曽町は山間の土地柄を活かし、林業が盛んな土地です。歴史の中では厳しい時代もありましたが、その中で少ない木材で軽く木工品を作る技術が発達しました。実際に持ってみると非常に軽く、そして手に馴染むことに驚きました。

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日本酒|中乗さん 特別純米(中善酒造店)
NA    甘酒|植物性乳酸あま酒(中善酒造店)


味も香りも落ち着いた印象で、飲みやすいお酒です。これを料理と合わせた時に、米の味わいが口に広がり、お酒だけで頂くより、料理と合わせるとより印象が強まります。

ノンアルコールドリンクは、同じく中善酒造店の「植物性乳酸あま酒」です。あとから出てくる料理に使用されたヨーグルトと同様、すんきから得られた乳酸菌を加え、乳酸発酵させた甘酒になっています。飲んでみると、一般的な甘酒にあるペタッとした甘さはなく、さらっとした味わいで、酸味がキリっと利いた味です。

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前菜|開田高原アイスクリーム工房のすんきヨーグルトとカブのブランマンジェ

ブランマンジェは、甘く、クリーミーなデザートのようなイメージがありましたが、1口食べてみると、軽やかな味わいながらも、複雑に味わいが重なった「料理」になっていることにおどろかされます。

カブの甘みが強く感じられ、ポタージュかなと思いもしましたが、載せられたヨーグルト、イクラを口の中で合わせると酸味とコクがあります。ヨーグルトの乳酸菌がすんき、というカブの漬物由来であることと、メイン食材であるカブの共通点もあり、”カブから得られた乳酸菌が作る味わいは、カブの甘味との相性の良さがありました。

また、ドリンクと一緒に頂くと印象が大きく変わります。料理だけ食べた時の軽い印象と一変し、まるで良い寿司を食べているような満足感があるペアリングは、発酵と口中調味を得意とする丸山さんらしい創意あふれる料理でした。

木曽町は寒さが厳しい地域です。このことから、独自の発酵文化がはぐくまれたと言われています。木曽町を代表する発酵食品の一つに「すんき」があります。塩を使わない独自の発酵によって作られるカブの漬物で、乳酸発酵による酸味が特徴的です。開田高原アイスクリーム工房の「スンキーヨーグルト」は、その名の通りすんきを作り出す乳酸菌を使ってヨーグルトを作っています。

スンキーヨーグルトの乳酸菌も元をたどればカブに由来するもので、料理のメインに使用された食材としてのカブとの共通点もあり、カブとヨーグルトがマッチした理由なのです。

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日本酒|七笑 純米酒(七笑酒造)

木曽町の七笑酒造の「七笑 純米酒」は、米特有のふくよかな甘味がありつつ、かすかに草木のような香りも感じられました。料理と合わせると野菜の風味を底上げしてくれ、より広い野原や畑の雰囲気を感じます。

木曽町は山間の町で、美瑛町は丘の町で相反する地理的特徴があります。この二つが組み合わさると、広大な高原や農地で深呼吸したような風味を楽しむことができました。

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前菜|美瑛・あらいふぁーむを中心に美瑛町産の野菜を使った一皿

あらいふぁーむの新井聡さんは、美瑛町の有機栽培農家です。元々は東京でサラリーマンをしていたところから、美瑛町に移住し農薬や化学肥料を使わない野菜づくりを始めました。鄭さんが美瑛町に移住を決意するきっかけになった人物で、新井さんの野菜の味の濃さに驚いたそうです。

カボチャやタマネギ、ビーツ、ニンジンなどの野菜をグリルしたり揚げたりした料理で、キクイモのソースが添えられています。口に入れた瞬間の各それぞれの野菜がもつ香りが力強く飛び込んできます。また、どの野菜も味が濃く甘さがあります。

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日本酒|第十六代九郎右衛門 十三度台九郎衛門(湯川酒造店)

淡い甘味があり、あっさりした口当たりでキレが良い味です。次に続く料理と一緒に味わうとジャガイモの甘味、香りをより一層高めてくれます。

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前菜|美瑛町産のじゃがいも

美瑛町のジャガイモじゃがいもを丸っと楽しめるように、茹でて低温調理した後、大きくカットし、バターを使って焼き目を付けています。美瑛町はジャガイモの生産が盛んで、皮が薄いのが特徴です。今回は、チーズを使ったソースと合わせています。

まず美瑛町のジャガイモの味と香りの濃さに驚かされます。ソースの味もしっかりしたものですが、それに負けないくらいの味わいです。

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日本酒|十六代九郎右衛門 山廃純米(燗酒、湯川酒造店)

山廃仕込みの純米酒で力強い味わいが特徴です。燗酒ということも相まって、酸味やかすかな樽のような香りもあります。だからこそ、次に続く熊のラグーのようなしっかりした味わいの料理に負けない味わいです。

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パスタ|木曽の百田健二郎さんの熊のラグーと美瑛町産小麦のパスタ

木曽地域の山でハンターをしている76歳の百田健二郎さんが狩った熊肉を使った料理です。コペンハーゲンの世界的レストラン「noma」が京都で開いたポップアップイベントで百田さんの熊肉が使われるなど、国内外の料理人から支持を受けています。

熊肉は、熊肉特有の臭みが少ないのが特徴です。町田さんが初めて百田さんの元を訪れた際は、門前払いでした。しかし、町田さんは通いつめる中で、百田さんが「自分が狩った食肉を大事に食べてくれる人にだけ提供したい」という思いをお持ちだ、ということが分かり、今回のイベントにあたって思いを伝え、貴重な食材を提供してくださいました。

そんな貴重な百田さんの食材をパスタにしたのはSOUYAさんです。ウデなどの部位を煮込んだラグーソース仕立て、美瑛町産小麦を使ったパスタは自家製の手打ちパスタの「オレキエッティ」を合わせます。耳たぶ型のようなもちっとした食感のパスタが力強いソースでしっかりとまとめ、ここでも美瑛町と木曽地域が皿の上で手を組んでいます。さらに五香粉をまぶしたポップコーンが、日本ではない異国情緒な雰囲気を与えていました。

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カクテル|創造

檜の香りとベリー系の甘さに、後から追いかける苦味が全体を引き締めています。

「創造」は、1品目のカクテル「制約」と異なり木曽町の発酵や木工などのクリエイティブをイメージして作られたものです。

木曽町の檜を取り寄せ、ベルモットに漬けて香りを移したものを使って作られています。そこに、コーヒーとイチゴが合わせられています。

「創造」と聞くと、芸術などの華やかな世界観を一見イメージしがちです。しかし、木曽町で行われている創造は、限りある資源や、寒さなどの厳しい環境下でも創意工夫をしながら生きている中で生まれるものです。一見、人が生きていくには難しい地域でも、環境と向き合いながら新たなものを創り出す、そんな木曽町の人々の力強さと、内に秘めた温かさが表現された一杯でした。

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メイン|美瑛もち豚と藁

美瑛もち豚の肩肉を、SOUYAさんはくるりと巻き込んで成型してオーブンで焼き、最後の藁の香りを纏わせた料理で、タマネギをシェェリービネガーで和えた付け合わせが添えられています。

豚肉を一口大に切って食べてみると、豚の脂の甘味が感じられました。食感もしっとり柔らかく、噛む度に豚の甘味や旨味が出て来ます。また、タマネギのシェリービネガー和えの酸味で口の中がすっきりとリセットし、再び豚肉が食べたくなる、無限ループの一皿です。

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食事|美瑛米のおにぎり味噌玉製法で作られた木曽・小池糀店の味噌汁

大きな鍋がテーブルに運ばれてきて、蓋を取ると沢山の水蒸気と共に、炊き立てご飯のいい香りが会場中に広がりました。今回用意したのは美瑛町の新米「ななつぼし」です。つい最近、刈り取り、精米したばかりの新米中の新米です。

炊き立てでアツアツのご飯を鄭さんが一つ一つ握っておにぎりにします。木曽の木のコップに入った味噌汁は、木曽町の味噌店「小池糀店」の熟成味噌を使った豚汁です。小池糀店の熟成味噌は、大豆と塩だけで発酵させた味噌玉を使って味噌を仕込む古来の製法を続けており、発酵中につく酪酸菌に由来するチーズのような香りがあるのが特徴です。

おにぎりは、咀嚼するとミルクのような甘さと旨味があり、小ぶりなおにぎりでも十分満足できる味でした。豚汁の具材には、これまで料理で使ってきたカボチャや豚肉などがふんだんに入っています。料理をするなかで、形や盛り付けの兼ね合いで切れ端はどうしても出てしまうものです。どの食材も無駄にしない、サステナブルな心遣いが感じられました。

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デザート|美瑛町産のとうきびと美瑛牛乳を使ったキャラメルのアイス

バニラアイスにとうきびのソースが纏わせてあり、一口食べると上品なコーンスープを飲んだような味わいになります。牛乳の濃厚さと、とうきびの香ばしさが、また食べたいと思わせてくれる味になっています。

パンビュッフェのパンを焼いた「エトヌンク」の人気商品コーンブレッドをラスクにして料理の下に敷いてあり、食感のアクセントになっています。なおキャラメルには牛乳だけでなく醤油を使っており、合わさると焼きとうきびの味になって、そのコントラストも楽しい一皿でした。

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食後のお茶|よもぎ茶

薬草のような、ハーブティーのような、今まであまり飲んだことがない味わいのお茶でした。かすかに土のような香りがあり、山の空気に似たものを感じました。

美瑛町の案内人    鄭 大羽
美瑛の食材、風景、空気など人が生きて生活をするすべての要素に惚れ込み移住をしました。

初めて美瑛を訪れたのは去年のちょうどこの時期。美瑛で口にした食材はどれも味が濃いのに優しさがありました。

この優しさは生産者さん、地元の方々の優しさから生み出された味なのかもしれません。

美瑛と木曽の豊かな食の魅力を食べてる方の心ダイレクトに届くよう、また自分が初めて美瑛を訪れ味わった感動を皆様にお届けします。

Food
ファームズ千代田の美瑛羊のタルタル
トマトと中善酒造店の酒粕

開田高原アイスクリーム工房のすんきヨーグルトとカブのブランマンジェ

美瑛・あらいふぁーむを中心に美瑛町産の野菜を使った一皿

美瑛町産のじゃがいも

木曽の百田健二郎さんの熊のラグーと美瑛町産小麦のパスタ

美瑛もち豚と藁

美瑛米のおにぎり味噌玉製法で作られた木曽・小池糀店の味噌汁

美瑛町産のとうきびと美瑛牛乳を使ったキャラメルのアイス

【パンビュッフェ】
エトヌンク 美瑛町産の小麦を使ったたくさんのパン


北海道美瑛町の案内人
鄭大羽
1995年生まれ。埼玉県出身。フリーランス料理人。2024年4月より北海道美瑛町に移住し、同町の地域おこし協力隊に着任。自身のルーツである韓国の料理を現代的にアレンジしたモダンコリアンのジャンルの料理を作る。テレビ番組で料理界のM-1と呼ばれる「chef-1グランプリ」の2022年大会のファイナリスト。Food HEROes U-30 COMMUNITYの第一期メンバー。
@鄭大羽  

木曾町の案内人    町田さくら

たった一口のお酒に人生に狂わされ、今では木曽谷に深くハマってしまいました。

柔らかく綺麗な水が、山から湧き出て酒蔵へ流れ込む。 木曽の杜氏たちが、情熱とプライドをかけて酒を造る。 厳しい寒さが美味しさをじっくり育む。 木曽の酒器で呑めば、さらに美味しい。 軽く、美しく、長く使い続けるほど愛おしい。 器になってもなお、木は生きている―。

たった一口の酒から、川、山、ヒト、歴史、文化まで繋がっていくストーリーを、まずは「美味しい」から味わってみてください。

DRINK
narai(杉野森酒造)    NA 木曽の森のジントニック

カクテル|制約
木曽の木肌、ラベンダー、カンティニ、梨、桃の葉
NA カキドオシ、エルダーフラワー、ラベンダー、梨

中乗さん 特別純米(中善酒造店)  NA 植物性乳酸あま酒(中善酒造店)

七笑 純米酒(七笑酒造)    NA ジンジャービア

十六代九郎右衛門 十三度台九郎衛門(湯川酒造店)
NA シャルドネ ブドウジュ―ス

十六代九郎右衛門 山廃純米(お燗、湯川酒造店)
NA クラフトコーラのお湯割り

カクテル|創造
木曽の檜、ベルモット、コーヒー、イチゴ
NA 木曽の檜、コーヒー、イチゴ

よもぎ茶

(NA:ノンアルコールドリンク)


長野県木曽町の案内人
町田さくら
2000年生まれ。埼玉県出身。2019年小さな日本酒barをプロデュース。2021年から長野県木曽町の「中善酒造店」にて蔵人として酒造りを学ぶ。2年間、冬は蔵人、夏は企画会社の生活を経て、2024年1月より福島県南相馬市を拠点にした株式会社ぷくぷく醸造のCFOに就任。HEROes U-30 COMMUNITYの第一期メンバー。
@町田さくら 


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Food HEROes U-30 COMMUNITY参加メンバー
丸山千里(フードクリエイター)    @まる
SOUYA(フレンチシェフ)    @そうや
伊藤大輔(バーテンダー)    @伊藤大輔

協賛:長野県木曽町、北海道美瑛町、江別製粉株式会社、開田高原アイスクリーム工房

関連情報
「日本で最も美しい村」連合web:https://utsukushii-mura.jp
【会場】フォレストゲート代官山 web:https://forestgate-daikanyama.jp
【パンビュッフェ提供】 エトヌンク 代官山 web:https://etnunc.jp

取材協力:池田祐希乃 @ゆきの 

Food HEROes U-30 COMMUNITYについて(参加登録もこちら)
https://community.foodheroes.jp/about 


Food HEROes U-30 COMMUNITYの食で地域を盛り上げていく活動に興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。

info@foodheroes.jp (江六前)